本文へ進む
企業むすびベンチャーと大企業を、事業で結ぶ。無料登録はこちら

企業むすび コラム

スタートアップの紹介資料大企業へつなぐ一枚に書くこと

大企業へ渡す紹介資料:事業と相談先を、非機密の一枚に

スタートアップの紹介資料は、詳しい営業提案書より先に、事業の中身と相談したい相手が分かる一枚を用意します。秘密情報を含めず、紹介者が大企業へそのまま転送できる内容にすると、どの部門へ話を届けるかを考えてもらいやすくなります。

会社の沿革、技術、将来構想をすべて載せても、読み手が「誰が何に使うのか」を説明できなければ、紹介先を選べません。まず伝えたいのは、自社の全体像ではなく、今回どんな話をしたいかです。

創業間もないベンチャーが、紹介を依頼する前に整理したい情報と、実績が少ない場合の書き方を紹介します。投資家向けの資料をそのまま送る前に、事業部の人が読む内容として点検しましょう。

目次
  1. 紹介用の一枚と、営業提案書の役割を分ける
  2. 一枚には、事業と希望する接点を七項目で書く
  3. 記入例:機能の説明を、使う場面へ変える
  4. 実績が少ないときは、現在の段階と確認条件を書く
  5. 転送する資料には、秘密情報を混ぜない
  6. 送る前に、初めて読む人に説明してもらう

紹介用の一枚と、営業提案書の役割を分ける

紹介用の一枚は、初めて読んだ人が、貴社の事業と面談する理由を理解するための資料です。発注の判断や、細かな仕様の確認まで一度に求める必要はありません。

営業提案書は、相手の課題が分かってから、提案内容、役割、費用、進め方を示すものです。紹介前にはまだ相手の条件が分からないため、詳細を決めたふりをせず、面談で確認したいことを残します。

投資家向け資料も目的が異なります。市場全体の成長や資金調達の計画が中心の資料だけでは、事業部の読み手が、自分たちの仕事とどう関係するかを判断しにくい場合があります。

紹介用の一枚を作っても、詳しい資料を捨てる必要はありません。まず一枚で適切な相手へ届け、関心に合わせてデモや詳細資料を追加する順序にします。

一枚には、事業と希望する接点を七項目で書く

紹介者に、提案内容の翻訳や資料の抜粋まで任せないことが大切です。以下は企業むすび編集部が整理した、紹介用の一枚の構成モデルです。

紹介用の一枚に載せる七項目
項目 書く内容 読み手が判断すること
会社と窓口 会社名、事業の短い説明、公式サイト、連絡先 どんな会社で、誰へ連絡するか
対象となる顧客 現在使っている人、または想定する顧客 自社の業務や顧客に関係するか
解決する課題 どの場面で、何に困っているか 自社の課題と接点があるか
提供できるもの 現在使える機能、製品、技術、支援 何を相談できる状態か
確認できた事実 公開可能な利用状況、確認条件、製品の段階 主張の裏付けは何か
求める連携 導入、販売、共同開発、現場での検証など どの部門へ届けるとよいか
初回に相談すること 面談で確かめたい問い、お願いしたい参加者 最初の面談で何を話すか

一つの欄へ複数の目的を詰め込まず、今回の相談に絞って書きます。販売も出資も共同開発も希望している場合は、今回いちばん先に相談したいことを示してください。

公式サイトが整っていない場合も、確認できないURLを載せる必要はありません。連絡先と、面談前に見てもらえる公開可能な情報を示します。

紹介者が「どの部署に送るのか」「この会社は何を提供しているのか」を追加で聞かなくても、候補を選べる内容を目指します。

記入例:機能の説明を、使う場面へ変える

小売店舗の返品対応を支援するサービスを持つベンチャーを例に、一枚への書き方を考えます。以下は説明用の架空例で、実在する顧客、製品、支援案件ではありません。

返品支援サービスの紹介資料:架空の記入例
欄 紹介資料への記入例
事業の短い説明 小売店舗の返品依頼を整理し、スタッフが確認する項目を案内するサービスを提供
対象顧客・課題 複数店舗を持つ小売企業。返品の条件確認や問い合わせの引き継ぎを整理したい担当者
提供できるもの 返品依頼の入力、確認項目の表示、対応状況の一覧。外部システムとの接続は個別確認
現在の段階 説明用デモを用意。相手の店舗で使えるかは未確認
求める連携 店舗運営や顧客対応を担う部門と、現場での利用条件を確認したい
初回の相談 現在の返品対応の流れと、サービスを試す対象業務について伺いたい

この例では、機能を増やして見せるより、返品のどの仕事を支援するかを先に書いています。「小売のデジタル変革を支援する」と広く表現するより、読み手が相談先を考えやすくなります。

相手にお願いすることも、「大企業の資産を使いたい」で終えません。店舗担当者との面談、対象業務の確認など、最初に必要な協力へ具体化します。

紹介先が変わっても、サービスの説明自体を毎回変える必要はありません。対象顧客と求める連携が相手に合っているかを確認し、違う使い方を想定する場合は、その部分を仮説として書き替えます。

実績が少ないときは、現在の段階と確認条件を書く

導入実績が少ない場合は、確認済みの事実と、これから検証することを分けて示します。将来の効果を実績のように書くより、相手が判断できる材料を正確に出すことが先です。

たとえば、説明用のデモが動くことと、相手の店舗で利用できることは異なります。紹介資料では、「デモ提供可能」「店舗での運用は要確認」と書けば、何を面談で確かめるかが分かります。

製品の提供状態は、次のように表示できます。

  • 現在提供できる:標準の機能と、利用するための条件を書く。
  • 個別確認が必要:接続、データ、現場の運用など、確認する対象を書く。
  • 開発中:現在見せられるものと、提供を約束していない範囲を分ける。

「業界初」「高精度」「大幅な効率化」などの表現を使う場合は、比較対象や確認条件を説明できるかを点検します。説明できない修飾を足すより、何ができるかを具体的に書いてください。

顧客の名前や利用状況を載せるときは、公開できる範囲を確認します。社名を出せなくても、対象の業務と確認できた内容を、秘密情報を含まない形で伝える方法があります。

転送する資料には、秘密情報を混ぜない

紹介用の一枚は、まだ面識のない部門へ届く可能性があります。最初の相談に必要な情報と、条件を決めてから開示する情報を分けて用意します。

特許庁のIP BASEは、スタートアップとの協業に向けた契約について、事業戦略に合わせた条件の検討と、秘密保持契約などのモデルを紹介しています。紹介段階の資料も、何を伝え、何を後から相談するかを整理する入り口になります。特許庁IP BASE「スタートアップのための知財活用に関する知識」

たとえば、紹介用には公開できる画面とサービスの役割を載せ、顧客の実データや技術の詳細は別資料にします。詳しい情報が必要になったときに、開示する目的と相手、扱う条件を相談してください。

資料の末尾に「転送可」と書くだけで、すべての情報を自由に扱ってよいことにはしません。送付前に、社内で公開範囲を確認した版を用意し、更新日や連絡窓口を付けておくと、古い資料との混同も減らせます。

具体的な秘密保持契約や技術の保護は、専門家と確認する仕事です。紹介用の一枚で、契約条件まで確定した状態を作る必要はありません。

送る前に、初めて読む人に説明してもらう

一枚ができたら、事業を詳しく知らない人に読んでもらい、三つの問いへ答えられるかを確認します。文字の見栄えだけでなく、紹介先を選べるかを見るための点検です。

  1. この会社は、誰のどんな仕事を支援しているか。
  2. 大企業のどの部門と、何を相談したいのか。
  3. 初回の面談では、何を確かめる予定か。

答えが自社の意図と違ったら、説明を追加する前に、対象顧客や相談内容を具体化します。専門用語を削るだけでなく、使う場面が伝わるかを確認してください。

先ほどの返品サービスの例で、「あらゆる小売システムを開発する会社」と理解されたなら、標準で提供するものと、個別開発を約束していない範囲を直します。「出資先を探している会社」と理解されたなら、今回求めるのは店舗部門との運用相談であることを明示します。

紹介者へ送るときは、一枚に加え、希望する相談先と転送可能な範囲をメールで短く伝えます。その後、どんな部門へ届けられたか、追加で求められた説明は何かを記録し、次に使う資料へ反映しましょう。