大企業との初回面談では、相手が何を検討しており、自社と組むと何を確かめられるかを聞きます。会社紹介やデモを一通り見せるだけで終えず、今回の相談が探索、製品の導入、共同での事業づくりのどれに近いかを合わせてください。
紹介を受けて会う場合でも、相手に具体的な用途や予算があるとは限りません。相手の検討段階が分かれば、次回は利用部門と話すのか、用途を考えるのか、検証を提案するのかを選べます。
創業間もないベンチャーの経営者に向けて、初回面談で使える質問と、その答えから次の仕事を考える方法を整理します。相手を評価するための質問攻めではなく、双方が準備することを決める対話として使いましょう。
目次
面談の目的が探索なのか、導入なのかを合わせる
最初に「本日は、どのような可能性を検討されていますか」と聞きます。自社が製品の購入を期待していても、相手は新しい事業の材料を探している段階かもしれません。
次の表は、企業むすび編集部が整理した初回面談のモデルです。話の途中で目的が変わっても構いませんが、何を検討しているかを確認してから準備を増やします。
| 相手の検討段階 | 初回に聞きたいこと | 次の面談につなぐ仕事 |
|---|---|---|
| 新しい可能性を探索している | 関心のある顧客や領域、自社で使える資産 | 用途の仮説を一つ整理する |
| 製品の導入を検討している | 実際の利用場面、現在の方法、必要な条件 | 利用する人と適合を確認する |
| 共同で事業をつくりたい | 双方が出せるもの、顧客へ届けたい価値 | 最初に確かめることと役割を決める |
KDDI担当者がスタートアップでの仕事を経験したインタビューでは、相手の限られた時間を使う商談への姿勢と、適切な部門へつなぐ難しさが語られています。会えたことだけを成果にせず、その面談で何を確認するかを絞る理由になります。ローンディール「大企業のオープンイノベーション推進者が体感した、スタートアップへの越境経験がもたらすもの」
相手が探索段階なら、「まだニーズがないので話すことがない」と判断する必要はありません。自社の製品が使われている場面を示し、相手の顧客や現場と組み合わせた用途を一緒に考えます。
六つの質問で、関心を具体的な仕事へ変える
用意した質問を順に全部聞くより、相手の答えに合わせて深めます。次の六つは、自社の説明と相手の話をつなぐための質問例です。
1. 「今回、どの部分に関心を持っていただきましたか?」
面談に応じた理由を聞くと、資料のどこから説明するかを選べます。技術そのものに関心があるのか、今の課題に使いたいのかで、見せるデモは変わります。
「新しい事業の材料を広く知りたい」という答えなら、製品の仕様を詳しく説明する前に、関心のある顧客や領域を尋ねます。ここで特定の用途を無理に合意する必要はありません。
2. 「どの顧客や現場で使えそうでしょうか?」
相手の感想を、使う場面へ具体化する質問です。「店舗で使えるかもしれない」という回答なら、店舗スタッフが使うのか、来店客へ提供するのかを聞きます。
用途がまだない場合は、自社から一つの候補を出してください。「当社ではこの場面を想定していますが、貴社にも似た仕事はありますか」と尋ねると、相手が現在の事業との関係を考えやすくなります。
3. 「今は、その仕事をどのように進めていますか?」
課題だけでなく、今の方法と、それを続けている理由を聞きます。すでに使っている仕組みを、自社の機能へすべて置き換える前提で話さないことが大切です。
相手が「手作業です」と答えても、すべてを自動化する必要があるとは限りません。人が判断している部分、作業が集中する場面、現行の仕組みで残る問題を聞き、自社が支援できる範囲を確かめます。
4. 「貴社と組む場合、最初に使えるものはありますか?」
顧客との接点、現場、設備、担当者の知識など、検討に使えるものを相談します。会社が持つ資産と、今回の窓口が利用を調整できる資産は分けて確認してください。
たとえば、店舗を保有していても、すぐに試験へ使えるとは限りません。「実際の店舗を使う前に、店舗担当者へ話を聞くことはできますか」と、最初の協力へ絞る方法があります。
5. 「個別の検証へ進むなら、何をそろえる必要がありますか?」
相手に費用負担を求める仕事を考えるなら、その検討を始める条件を聞きます。予算の金額だけでなく、何を決めるための作業か、見積もりに必要な情報は何かを確認します。
予算や承認の担当が不明なときは、その場で開始日を約束しません。誰が確認するかを相談し、自社は提供範囲や概算の前提を整理する、と次の準備を分けられます。
6. 「次回、何を確認できると検討が進みますか?」
次回面談の目的を、双方が理解できる言葉にする質問です。「詳しい資料を送る」より、「利用する人と、試す業務を確認する」のように、次に決めることを示します。
新規事業の窓口から関連する部門への確認が必要なら、誰に何を相談してもらうかを整理します。すべての社内判断を初回に把握するのではなく、次の仕事に必要な範囲を合わせてください。
記入例:導入の話か、用途探しの話かを見分ける
店舗スタッフの休憩計画を支援するサービスを、大企業へ紹介する架空例で考えます。以下は質問の使い方を説明するモデルで、実際の商談や支援成果ではありません。
相手は、サービスに関心はあるものの、店舗向けの新しい支援事業になるかを探索しています。この段階で「何店舗へ導入しますか」と聞いても、相手はまだ答えられません。
まず関心の理由を聞き、スタッフの業務を支援するサービスを探していると分かったら、現在どのような企業や店舗と関係を持つかを尋ねます。実際に製品を使う可能性のある店舗担当者へ、仕事の進め方を聞くことが次の候補になります。
| 相手の回答例 | 自社が次に確認すること | 次回に用意するもの |
|---|---|---|
| 店舗向けの新しいサービスを探している | 誰のどの仕事を支援できるか | 利用場面を示す短いデモ |
| 自社店舗の休憩計画を改善したい | 現在の手順と、利用者に必要な条件 | 標準機能と個別確認の範囲 |
| 取引先店舗へ共同で提案したい | 相手の顧客、販売と導入支援の分担 | 共同提案の仮説と役割の案 |
同じ製品でも、次の面談で話す内容は異なります。初回の反応だけで商談の段階を決めず、相手の答えから次に確認する仕事を選びます。
デモの後には、使う条件と残る疑問を聞く
デモを見せたら、感想を聞くだけでなく、利用する条件を確認します。「気に入っていただけましたか」より、「実際に使うとしたら、どこに追加の確認が必要ですか」と聞く方が、次の資料を選ぶ材料になります。
先ほどのモデルなら、計画を作る担当者が確認できるか、既存の勤務情報をどのように使うか、予定が変わった場合に誰が直すかを尋ねます。自社が対応できることと、個別に調べることをその場で分けてください。
答えが出ない場合は、その点を知る人へ確認してもらうことを次の仕事にします。曖昧な返答を、製品の不採用や導入決定へ急いで読み替えません。
詳しい技術情報や非公開データが必要になったら、開示の目的と相手、扱い方を相談します。初回から、資料の中身をすべて共有する必要はありません。
面談の最後に、双方の準備を短く確認する
終了前に、今回分かったこと、残った問い、次に準備することを読み上げます。自社の理解が相手と一致しているか、その場で確かめるためです。
例えば、次のように整理できます。
本日は、店舗向け支援の用途を探す段階だと理解しました。当社は、休憩計画の利用場面を示すデモを用意します。貴社では、店舗運営に詳しい方へ現在の進め方を確認いただけますでしょうか。次回は、最初に確かめる業務と参加者について相談したいと考えています。
この文面も架空のモデルです。「面談を続けたい」という希望と、「次回をこの目的で実施する」という合意を分けて確認してください。
面談後は、自社が用意するものと、相手に確認をお願いしたことを短く送ります。次回の日程が決まっていなくても、何が分かれば再度相談できるかを残すと、単なる近況確認の連絡を繰り返す必要が減ります。