大企業とのマッチングサービスは、登録企業の数だけでなく、誰と会え、面談後にどこまで支援を受けられるかで選びます。自分で相手を探す、募集へ応募する、事業を発表する、紹介を相談する、という違いを先に確認しましょう。
創業間もないベンチャーには、候補を探す時間だけでなく、面談や個別提案に使う時間も限られています。登録先を増やす前に、自社に足りないのが候補情報、接点、具体的な連携の設計のどれかを整理すると、使う手段を選びやすくなります。
本記事は、企業むすびを運営するイノベーション総研の編集部による比較です。自社サービスを含み、公式に確認できる内容を同じ軸で整理します。
目次
大企業へ売るのか、一緒に事業を作るのかで入口を選ぶ
候補のリストがあれば自社で提案を進められるのか、担当者との接点や提案の整理も必要なのかを考えます。欲しい支援が違えば、比較すべきサービスも変わります。
例えば、提案する業界と部署が決まっているなら、企業を検索し、自社で連絡する手段が候補になります。何を提案するかを大企業と一緒に考えたいなら、募集テーマや、選定後の対話を支えるプログラムも見ます。
担当者に会えないことと、会った後にプロジェクトが進まないことは別の課題です。「マッチング」という名称だけで、どちらも解消する支援だと受け取らないようにしましょう。
企業むすびの見解:足りない仕事を一つ選ぶ
私たちは、創業初期ほど「候補を増やすこと」と「一社との検討を進めること」を分けて予算を配分する方がよいと考えます。相手の業界や用途が定まらない段階で連絡数だけ増やすと、個別の説明に経営者の時間を使い、学んだことが次の提案へ残りにくいためです。
販売する製品と用途が明確なら、まず検索・発信・推薦を使い、相手から何を聞かれるかを整理します。面談はできるのに検討が止まるなら、新しい登録先を増やす前に、実行部署との調整や次の検証を決める支援を検討します。
逆に、顧客や製品の提供範囲を自社で説明できない状態を、紹介者だけで解消できるとは期待しません。何が提供済みで、どこが相談中かを分けた資料を用意することが、外部支援を使う前の仕事です。
公式情報で確認できる、接点のつくり方を比べる
以下は、2026年10月に確認した公式情報をもとにした比較です。掲載順は評価順位ではなく、料金が確認できない欄を高い・安いという評価に使っていません。
| 手段 | ベンチャーの入口 | 公式に確認できる機能・支援 | 費用を確かめる点 |
|---|---|---|---|
| AUBA | 法人格のある企業が登録し、相手を検索・発信する | 企業検索、共創プロフィール、企業推薦や面談支援などのプラン | 有料プランでのメッセージチケットと、利用する支援の条件 |
| six brain | 事業・協業プランを登録し、推薦やオファーを受ける | 企業への推薦、案件管理、人による条件調整やマッチング後支援の案内 | 顧客ごとのプラン提案。料金と支援範囲は問い合わせで確認 |
| Crewwのアクセラレータープログラム | 募集内容を確認して応募する | 選考、事業会社との協業案の改善、間に入るサポート | 応募するプログラムの募集要項・契約で確認 |
| earthkey pitch | 登壇を申し込む、イベントを視聴する | 選定されたスタートアップの発表と質疑の機会 | 視聴は無料の案内。登壇・個別支援の費用は別途確認 |
| 企業むすび | 自社の事業・技術と、目指す連携を登録する | 親和性の高い大企業の紹介、連携の目的・役割・進め方の支援 | 登録料0円。合意した紹介などの対象アクションに費用 |
サービスの名前だけで、支援範囲を一つにまとめないことが大切です。プラン、募集、個別契約によって使える内容が変わるため、自社が利用する範囲を確認します。
AUBA:自社から探す機能と、支援プランを分けて見る
AUBAの公式ページでは、企業検索やプロフィール発信に加え、アドバイザー、企業ピックアップ、月次面談などの支援が案内されています。自分で候補を探す機能だけのサービスとは限りません。AUBA「AUBAとは」
公式ヘルプは、有料プランの契約によってメッセージチケットを受け取り、追加購入もできることを説明しています。登録と、自社から連絡するための利用条件を分けて確認してください。AUBAヘルプ「メッセージチケットの獲得」
公式のプラン詳細への導線はログイン画面に進むため、今回の公開ページだけでは具体的な金額を確認できませんでした。連絡機能、利用期間、人による支援を分けて見積を求めると、自社が必要な範囲で比べられます。
six brain:推薦とオファーを受ける仕組みを検討する
six brainは、スタートアップの情報をもとに大企業へ協業候補を提案し、オファーを受ける仕組みを案内しています。公式ページには、人による権限・予算等のすり合わせと、案件の進捗管理も掲載されています。six brain「スタートアップの方へ」
問い合わせ、ヒアリング・審査、プラン提案という利用の流れです。自社から特定企業へ連絡したい場合は、その機能や条件が含まれるかを聞き、オファー待ちと使い分けます。
Creww:応募するテーマと、進行中の支援を確認する
Crewwの公式ページは、エントリー、選考、事業会社との協業案の改善をプラットフォーム上で進め、必要に応じて間に入る支援を説明しています。応募の機会だけでなく、検討を進める支援もあります。Creww「スタートアップ向けアクセラレータープログラム」
ただし、プログラム名から費用や採択後の条件を一律に決めないようにします。自社の提案が募集テーマに合うか、参加する人員と日程を用意できるかを、個別の募集要項で確認します。
earthkey pitch:発表の機会と、その後の接点を考える
earthkey pitchは、スタートアップが事業を発表し、大企業などや投資家が参加するイベントとして案内されています。登壇企業を選定する仕組みと、発表後の質疑の機会が確認できます。earthkey「earthkey pitch」
無料視聴の案内は、登壇や紹介にかかる費用まで無料と示すものではありません。登壇を検討する場合は、自社の対象者が参加するか、個別の面談へどうつながるか、登壇条件は何かを聞きます。
紹介後に、誰がどの仕事を担うかを聞く
相手と会えた後の仕事まで考えると、自社に必要な支援を選びやすくなります。「伴走」や「事業化支援」と書かれていたら、実際の対応を確認しましょう。
問い合わせでは、例えば次の質問を使えます。
- 相手企業のどの部署との接点を想定していますか。
- 相手のニーズと自社の事業の適合は、誰が確認しますか。
- 面談に同席し、目的や次の作業を整理する支援はありますか。
- 条件調整や検証の設計は、どの契約・プランに含まれますか。
- 紹介後に話が止まった場合、どの対応を相談できますか。
自社で面談後の提案を進められるなら、すべての支援を求める必要はありません。反対に、接点だけでは進め方が分からないなら、紹介後の作業を含めて比較します。
料金は、何を行ったときに発生するかで見る
「無料」「成果報酬」という言葉だけでは、利用時に負担する費用が分かりません。無料になる範囲と、料金の対象になる行為を確認します。
登録は無料でも、有料の連絡機能や個別支援が必要な場合があります。成果報酬型でも、紹介や面談自体が料金対象なら、成約していない段階で費用が発生する可能性があります。
利用前には、対象アクション、発生条件、金額や算定方法、紹介後の支援範囲を確認します。自社が求める接点と、その後の作業を含めて、予算内で使えるかを考えましょう。
企業むすびの場合は、登録料0円で、事前に合意した紹介などの対象アクションに費用が発生する仕組みです。自社に合う費用条件を確認してから、紹介機会を利用します。
問い合わせでは、最初の面談までの費用を具体化する
見積を比べるときは、同じ利用目的を伝えます。「料金を教えてください」だけでなく、誰との面談を希望し、その前後で何を支援してほしいかを示すと、含まれる仕事の違いが分かります。
当社は、店舗向けの業務サービスを提供しています。大企業の利用部署との面談を希望しています。候補の選定、担当者への連絡、面談の目的整理、面談後の調整のうち、どこが支援に含まれますか。料金が発生する行為、発生時期、支援を追加する場合の条件も教えてください。
これは編集部作成の問合せ文のモデルです。月額、連絡機能、紹介単位、個別支援を分け、契約前に条件を書面でそろえます。
紹介する人の知見は、確認する内容から見る
人による紹介や調整を求めるなら、相談時にどの情報を確認するかも判断材料になります。事業の説明を聞いた後、相手企業の課題や実行部署とどう照合するかを聞きます。
「幅広いネットワークがあります」という説明に加え、例えば次の点を確認できます。
- 自社の商品を、どの用途や事業の候補として考えていますか。
- 紹介前に、相手の担当部署へどの内容を確認しますか。
- 両社の期待が異なる場合、誰がどのように整理しますか。
- 面談の後、双方が準備することを決める支援は含まれますか。
紹介先の機密情報を開示してもらうための質問ではありません。会社名のリストに加えて、具体的な提案へつなぐために確認する内容を知ることが目的です。
自社も、製品の状態、提供できる範囲、相談したい顧客や用途を説明する必要があります。紹介者へ判断をすべて委ねるのではなく、どの仕事を自社が担い、どこを支援してほしいかを合わせましょう。
モデル:用途が決まったサービスと、探索中の事業で使い分ける
次の二つは、編集部が作成した架空の判断例です。特定サービスの成功や、実際の顧客の選択を示すものではありません。
販売する製品と提案部署が決まっているベンチャーなら、自社で相手を検索・選定し、連絡できる仕組みを検討できます。提案に必要な情報や連絡機能の条件を確かめ、自社の営業と組み合わせます。
一方、企業ごとの用途を一緒に具体化したいベンチャーなら、募集テーマへの応募や、紹介時の目的整理を含む支援が候補になります。参加するだけで用途が決まると期待せず、自社から提示できる事業・技術を整理します。
どちらも使う場合は、同じ提案先へ重複して連絡しないように、接点を得た経路と進捗を管理します。サービスを増やすことより、具体的な検討を進められる範囲で利用することを優先しましょう。
利用後は、次の仕事と自社の負担で見直す
利用の振り返りでは、会った数だけを成果にしません。対象用途が分かったか、実行部署と話せたか、次に互いが行うことが決まったかを、経路ごとに記録します。
面談から新しい用途が見つかったなら、契約へ進んでいなくても探索の成果になります。一方、同じ説明を繰り返し、相手の検討目的が分からないなら、プロフィールや紹介条件、受ける支援を見直す材料です。
サービス料に加え、経営者の面談時間、個別資料、開発担当の事前対応も残します。外部サービスをやめる・続ける判断は、費用の安さだけでなく、自社の成長に必要な仕事へ時間を使えているかで行いましょう。