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企業むすび コラム

大企業向け協業提案書の作り方双方の役割と最初の検証を示す

協業の提案書をつくる:双方の役割と、最初に確かめること

大企業向けの協業提案書は、相手の顧客や事業と自社の強みを組み合わせ、何を一緒に進めるかを示す資料です。会社紹介に加え、対象顧客、双方が提供するもの、最初に確かめること、次に相談したい仕事を書きます。

「貴社の販売網を使わせてほしい」だけでは、相手が参加する理由が伝わりません。一方、詳しい開発計画を先に決めても、相手の現場や顧客の条件が分からなければ、検討の前提が合いません。

紹介後の面談で関心のある領域が見えてきたベンチャーの経営者に向けて、協業提案書の構成と記入例を整理します。相手へ自社製品を販売するだけの営業資料や、先方の社内承認用の資料とは役割を分けて考えましょう。

目次
  1. 協業提案書は、双方が取り組む理由から書く
  2. 提案書は、六つの内容をひと続きにする
  3. 記入例:食品卸との協業案を、提案書の構成にする
  4. 強みの一覧を、顧客へ届ける役割へ変える
  5. 最初の検証は、まだ分からない問いから決める
  6. 提案書を送った後は、回答に合わせて論点を直す

協業提案書は、双方が取り組む理由から書く

最初に示したいのは、何を一緒に行い、誰の役に立つかです。技術や製品の優位性を説明する前に、相手の事業との接点を置きます。

KDDIが公開したエクシング担当者の登壇レポートでも、目的を明確にし、双方の資産を使った具体的な事業提案を重視する考え方が紹介されています。協業の話を、何か一緒にできないかという相談だけで終わらせないことが参考になります。KDDI MUGENLABO Magazine「エクシングのオープンイノベーション戦略」

ベンチャー側では、自社の目的、相手の目的、共通で確かめたいことを分けて書いてみてください。目的が同じでなくても、一緒に行う仕事が双方の事業へつながるなら提案できます。

たとえば、自社は店舗向けサービスの販売を増やしたく、相手は顧客店舗への提案内容を充実させたい、と整理できます。そのうえで、同じ店舗に対して、何を組み合わせて提供するかを考えます。

相手の目的をまだ聞けていない場合は、「貴社はこの事業を求めている」と断定しません。「このような価値につながると考えており、面談で確認したい」と、仮説として示します。

提案書は、六つの内容をひと続きにする

協業提案書には、事業の仮説と、最初の仕事がつながる構成を置きます。以下は企業むすび編集部が作成したモデルで、ページ数や書式を固定するものではありません。

協業提案書を構成する六つの内容
内容 提案書に書くこと 読み手が確認すること
対象顧客と課題 誰の、どの場面を改善するか 自社の事業や顧客に関係するか
提供する価値 今の方法がどう変わると考えるか 顧客にとって使う理由があるか
双方が出すもの 製品、顧客接点、運用の知識、設備など 実際に提供できる条件は何か
提供の流れと役割 提案、利用開始、顧客対応を誰が担うか 足りない仕事や負担がないか
最初の検証 何を、どこまで確かめるか その結果で次に何を判断できるか
次に相談すること 参加者、必要情報、費用を具体化する準備 今回の面談で何を決めるか

製品の詳しい仕様は、必要な人が見られる別紙にできます。初めて読む人が、今回の提案の目的と双方の役割を追えることを優先してください。

将来構想を載せる場合も、今の提供範囲とは分けます。将来の全機能や全社展開を、最初の協業で実施する内容として並べないようにします。

記入例:食品卸との協業案を、提案書の構成にする

以下は、小規模な飲食店向けの発注支援サービスを持つベンチャーが、食品卸へ提案する架空モデルです。実在する企業の提案書や企業むすびの実績ではありません。

食品卸の取引先店舗へ、発注時の確認作業を支援するサービスを届ける案を考えます。食品卸自身に製品を購入してもらう話とは区別し、顧客店舗への販売や利用支援を双方でどう担うかを示します。

協業提案書の中心は、自社の説明ではなく、両社が組むことで顧客にどんな価値が生まれるかです。相手の資産を「借りる」とだけ書くと、相手には作業を負担する理由が伝わりません。

六つの内容は、スライド六枚で順に作る方法も、一枚の概要にまとめて詳細を別添する方法もあります。以下は食品卸との共同提案という架空モデルを、短いスライドへ直した編集部のひな形です。枚数は必須条件ではありません。

協業提案書の構成をスライドへ直す記入モデル
ページの役割 最初に書くメッセージ 裏付け・未確認の情報
顧客と課題 飲食店の発注時の確認作業を整理したい 現在の発注業務は顧客との面談で確認する
共同で提供する価値 卸の営業接点から、発注支援を提案する 今回の顧客への適合・需要は未確認
双方が組む理由 自社は機能、食品卸は業務理解と顧客接点を持つ 利用できる接点と担当者を別に相談する
提供・販売の役割 説明、契約、設定、問い合わせを分担する 売上・費用・責任の配分は協議する
最初に確かめること 対象業務と標準機能が合うかを確認する 顧客への聞き取り後、試行前に範囲・費用を合意する
今回の依頼 顧客業務を知る担当者との面談を相談する 共同販売の承認とは分けて依頼する

最初から収益予測を確定させる必要はありませんが、お金の流れを何も書かない提案も判断しにくくなります。誰が顧客と契約し、どの価値に対価を求め、どの作業を負担するかを仮の案として示します。

既存の販売方式を使う場合でも、代理店が販売するのか、顧客を紹介するのか、両社で新しい商品を提供するのかで役割は変わります。提案の本文に書く関係と、表の役割が同じかを点検してください。

強みの一覧を、顧客へ届ける役割へ変える

「当社は技術、貴社は販売網」とだけ書くと、誰が顧客へ説明し、使い始める準備をするかが抜けやすくなります。顧客の行動に沿って、必要な仕事を分けてください。

先ほどのモデルなら、少なくとも次の仕事が考えられます。

  1. 対象店舗へ、今回の提案を説明する。
  2. 店舗の現在の発注手順と、必要な機能を確認する。
  3. 利用する設定や情報を準備する。
  4. 店舗スタッフへ使い方を説明する。
  5. 問い合わせに対応し、利用後の課題を確認する。

提案書では、「誰が担う予定か」「まだ決まっていないか」を区別します。未定の仕事まで、相手の担当として書き込まないでください。

たとえば、顧客への最初の案内は卸会社へ相談し、サービスの操作説明はベンチャーが担う案を出せます。ただし、卸会社が導入後の問い合わせ対応まで行うかは、別の確認が必要です。

共同で販売する場合は、顧客との契約、料金の受け取り、収益の分け方、利用後の支援も整理します。初回の提案で詳しい契約を確定する必要はありませんが、あとで決める仕事として残しておきます。

料金の額を提案する前に、誰が何に対して支払う想定かを合わせてください。店舗から利用料を受け取る案と、卸会社が自社の顧客向けサービスとして購入する案では、販売する仕事と費用の前提が変わります。

まだ収益の仕組みを決めていない場合は、候補を仮説として記し、顧客が使う理由と合わせて相談します。見込みの売上を、確定した取引額として提案書に載せないことが大切です。

最初の検証は、まだ分からない問いから決める

検証の目的は、提案書に載せた構想の全部を実現することではありません。次に進むか判断するために、今まだ分からないことを確かめます。

店舗の課題が確認できていないなら、最初は店舗担当者への聞き取りです。課題は分かっていても機能が合うか未定なら、対象業務を絞った試行が候補になります。

先ほどの発注支援のモデルなら、「現場の発注内容を当社の標準機能で整理できるか」「卸会社へ渡す情報が足りるか」を分けて確認できます。新しい機能を作る前に、今ある機能で分かることを選びます。

検証案には、確かめる対象、双方の作業、結果を確認する人、その後の判断を載せてください。個別対応が発生する場合は、必要な人員と費用も同時に相談します。

構想の説明を見てもらう面談と、有償で仕事を依頼される検証は別です。発注や作業開始の前に、合意する範囲を確認します。

提案書を送った後は、回答に合わせて論点を直す

提案書の末尾では、今回承認してほしいことを一つに絞ります。事業化の条件がまだ分からないのに、「共同事業を正式に始める」という決定を最初から求めると、相手には検討できない問いになります。

以下は食品卸の架空モデルで、最初の面談を依頼する文面です。

貴社のお取引先店舗の発注業務と、当社の標準機能が合うかを確かめたいと考えています。まず、店舗の業務に詳しい担当者とお話しする機会をご相談できますでしょうか。その結果を基に、試す範囲と双方の役割、必要な費用を提案します。

資料を送って「検討します」と返答があったら、どの部署でどの論点を検討する予定かを、共有できる範囲で聞きます。相手の事業目的に合わないのか、役割の負担が大きいのか、担当が未定なのかで、直す箇所は異なります。

企業むすびの見解:提案書の修正は、資料の見栄えより、相手が取り組む理由と実際に担える仕事のずれから始めるべきです。顧客の価値が弱いなら用途を見直し、現場を確保できないなら最初の検証を縮小し、提供役割が重すぎるなら分担案を変えます。追加の機能や値引きが、すべてのずれを解消するわけではありません。

「詳しい計画が必要」と言われた場合は、何を判断するための計画かを尋ねます。正式な検証を承認する資料なら、範囲・評価方法・費用・相手の作業へ具体化します。まだ用途を探す段階なら、長期収益計画を作り込む前に、顧客や現場の話を聞く仕事を選べます。

相手が今回は取り組まないと判断した場合も、断られた理由を自社の仮説へ戻します。相手固有の事情なら別の企業への提案、顧客に価値がないなら用途の再検討というように、次の行動を分けてください。