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企業むすび コラム

大企業のベンチャー探索ニーズが曖昧な段階から探す方法

ベンチャーを探す:ニーズが曖昧でも始められる

大企業が新規事業のためにスタートアップを探すときは、自社で提供できるものと、まだ確かめたいことを整理し、候補との面談で事業の可能性を具体化する進め方が使えます。必要な技術や解決策を、最初から一つに決め切る必要はありません。

「新しい事業を考えたいが、社内には実行する人や技術が足りない」「ベンチャーと話してみたいが、何を基準に選べばよいか分からない」。探索の段階では、こうした状態から始まります。

ただし、目的を示さずに候補の会社説明を聞き続けても、次の提案に結びつけにくくなります。広く発見する場と、具体的な協業を相談する場を分け、面談後に社内で検討することまで決めておきましょう。

目次
  1. ニーズが決まる前は「自社で使えるもの」と「知りたいこと」を書き出す
  2. 四つの探索経路を、見つけたい相手と社内の準備に合わせて使う
  3. ベンチャーへの面談依頼は、自社の提供価値まで伝える
  4. 初回面談では、会社の説明を「一緒に何を試すか」へつなげる
  5. 面談後は、候補を並べるだけでなく次の確認を決める
  6. 探索担当者と、実行を担う部署を早めにつなぐ

ニーズが決まる前は「自社で使えるもの」と「知りたいこと」を書き出す

探す相手の条件が曖昧でも、面談で提示できる情報はあります。自社の顧客、販売経路、施設、現場の知識、データなど、連携に使える可能性があるものを挙げましょう。

それぞれについて、「会社が持っている」と「担当部署が今回の連携に提供できる」を区別します。例えば、大きな顧客基盤があっても、新規事業担当者が顧客への案内や実験をすぐに手配できるとは限りません。

最初の探索メモには、次の四項目を入れます。

  • 関心のある顧客・市場:今の顧客を深く支援するのか、新しい顧客へ広げるのか。
  • 提供を検討できるもの:販売網、施設、現場との接点、業務知識など。
  • 現時点で知らないこと:顧客の課題、購入する理由、必要な運用、協業相手の得意分野など。
  • 最初に確かめられること:現場担当者への相談、顧客への聞き取り、小規模な試行など。

このメモは、応募条件を固定するためのものではありません。ベンチャーから新しい用途や顧客像を提案されたときに、自社で検討できる範囲を示すための準備です。

四つの探索経路を、見つけたい相手と社内の準備に合わせて使う

候補を広く知りたいのか、特定の課題を相談したいのかで、使いやすい経路は変わります。一つの経路だけで完結させず、広く調べる段階から具体的な対話へ移れるように組み合わせます。

探索経路の使い分け
探索経路 向いている段階 得られるもの 大企業側で準備すること
データベース・公開企業情報 関心領域の企業やサービスを広く把握する 分野、事業内容、企業情報の比較 検索する顧客・用途を変えて調べ、公式情報で確認する
支援機関・専門家からの紹介 候補との相性や、相談する相手を確かめたい 背景を共有した候補選定、面談への接点 自社が提供できるもの、未定の点、面談の目的を伝える
イベント・ピッチ(短い事業紹介の発表) 知らない発想や企業を見つけたい 新しいテーマ、経営者や担当者との接点 面談後に話したいことと、自社側の窓口を用意する
公募・共創プログラム 検討テーマや提供条件を外部に示せる 関心のある企業からの提案 課題、使える資源、選考、採択後の進め方を示す

この表は探索経路の整理であり、各経路の成果や成功率を順位付けしたものではありません。自社の担当者が比較や連絡に使える時間も含めて選びます。

例えば、STARTUP DBは企業情報の検索に加え、企業向けプランで専門家による候補のリストアップや面談調整を案内しています。データを調べる仕事と、実際に会うための仕事を分けて検討できる例です。STARTUP DB

海外のスタートアップを探す場合は、ジェトロのJ-Bridgeも選択肢になります。海外企業の情報、個別の協業ニーズに応じた候補選定・面談、相談サービスを案内しており、国内探索と同じ対象範囲ではありません。J-Bridge

ベンチャーへの面談依頼は、自社の提供価値まで伝える

スタートアップにとっても、面談は経営者や事業担当者の時間を使う判断です。「御社に関心があります」だけでなく、なぜ会いたいか、自社と話すと何を検討できるかを示します。

ニーズが未確定なら、その状態を率直に伝えて構いません。そのうえで、関心のある顧客や、自社側で提供を検討できるもの、面談で一緒に考えたいことを添えます。

以下は、施設を運営する大企業が、来訪者向けサービスの候補を探す場合の説明用文面です。実際の面談依頼や支援実績ではありません。

当社では、運営する施設の来訪者に向けた新しいサービスを探索しています。現時点で具体的な解決策は決まっていませんが、現場担当者との対話や一施設での試行を検討できる環境があります。貴社のサービスを拝見し、来訪者への案内や施設利用の改善に可能性を感じました。現在の顧客・用途を伺いながら、当社の施設との組み合わせで確かめられることをご相談したいと考えています。

まだ社内承認を得ていないものは、「提供できます」と断定せず「提供を検討できます」と書きます。相手に期待していることも、一方的な無償提案の依頼にならないよう、まず対話で確かめる範囲を示しましょう。

初回面談では、会社の説明を「一緒に何を試すか」へつなげる

初回の面談で見たいのは、資金調達額や技術の目新しさだけではありません。誰のどの課題に対して価値を提供しており、自社と組むと何が変わるかを聞きます。

聞き方を変えると、相手が実際に提供できることと、まだ開発・検証が必要なことを分けやすくなります。

候補企業との面談で確認すること
聞きたいこと 面談での質問例
現在の顧客と価値 「今、どのような顧客が、何を理由にサービスを使っていますか」
提供できる範囲 「現時点で提供できることと、個別対応が必要なことは何ですか」
自社との組み合わせ 「当社の顧客や施設と組み合わせると、どんな用途が考えられますか」
相手が求めるもの 「大企業との連携で、販売機会、実験環境、資金、業務知識のどれを求めていますか」
最初の確認 「事業として進めるかを判断するために、まず何を確かめたいですか」

相手が話した用途に、自社側から別の使い方を提案することもできます。技術を発注する前提だけでなく、共同販売、顧客への新しい価値の提供、運用の組み合わせなども検討してください。

KDDI ∞ Laboの公式案内は、スタートアップのアイデア・技術と、大企業側の資源を組み合わせる事業共創を示しています。2026年の支援プログラムでは、顧客基盤や施設など、各社が提供を検討するものと課題を公開しており、研究開発に限定しない連携を考える参考になります。KDDI ∞ Labo・MUGENLABO支援プログラム2026

イノベーション総研は、候補企業を比較するとき、自社にない技術の一覧よりも、組み合わせたときの顧客価値と最初に試せる仕事を整理することを勧めます。同じ領域の企業でも、相手が求める連携の形や、自社で受け入れられる条件は異なります。

面談後は、候補を並べるだけでなく次の確認を決める

面談が終わったら、候補ごとに「自社との事業の仮説」と「未確認の条件」を残します。知名度や印象の順位だけでは、具体的な検討へ移る材料が不足します。

例えば、先ほどの施設のモデルなら、「サービスを提供すると案内業務がどう変わるか」「来訪者が利用したい場面があるか」「自社が試行の場所と担当者を確保できるか」を分けて確認します。聞き取りだけで確かめられることと、利用環境を整えて試す必要があることも分けましょう。

検討メモの最後には、次の行動を一つ置きます。現場担当者を交えた再面談、顧客への聞き取り、検証計画の作成など、担当者と目的を明確にします。

検討を保留する場合も、「何がそろえば再開できるか」を記録し、相手に共有します。進める予定がないまま、資料作成や追加提案を繰り返し依頼しないことが、双方の時間を守るうえでも必要です。

探索担当者と、実行を担う部署を早めにつなぐ

新規事業担当者が候補を見つけても、その人だけで販売や現場での試行まで進められるとは限りません。探索の途中から、顧客や現場を知る部署を巻き込む準備をします。

「どの部門に相談するか分からない」場合は、自社が提供しようとするものの管理部署から確認します。施設なら運営側、顧客への案内なら営業や顧客担当、データ利用なら管理担当など、具体的な仕事に沿って接点を探してください。

ただし、最初からすべての審査や承認を終える必要はありません。会社紹介を聞く面談、非公開情報を使う協議、現場での試行では必要な確認が異なるため、次に進む行為に合わせて手続きを整理します。

次の探索では、候補企業の数だけを目標にせず、自社側で面談に持ち込める情報と、面談後に確かめる仕事を用意しましょう。ニーズが明確になっていく過程そのものを、ベンチャーとの対話で進められます。