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企業むすび コラム

大企業の商談が止まったら「面白いですね」の次を確認する

商談が止まったら:「面白い」の次を確認する

大企業との商談が「面白いですね」で止まったら、関心の強さを聞き直すより、次の判断に何が足りないかを確認します。課題を持つ部署、費用の検討、実際に使う人が決まっているかを分けると、次に提案することが見えてきます。

ベンチャーにとって、担当者からの好反応はうれしいものです。ただ、「前向きな返答」と「購入や協業を検討できる状態」は同じではありません。

だからといって、大企業の担当者に決断を迫れば進むとも限りません。先方の検討状況に合わせて、追加資料、利用部署との面談、時期を決めた再相談のどれが必要かを選びましょう。

目次
  1. 「関心がある」の先に、検討できる状態があるかを見る
  2. 止まった商談は、四つの項目で再確認する
  3. 再連絡は、進捗確認より選択肢を示す
  4. 継続・保留・見送りを、自社の投入量と合わせて決める

「関心がある」の先に、検討できる状態があるかを見る

相手が自社の技術やサービスに関心を持っていても、用途を探している段階かもしれません。その段階で見積や契約を急ぐと、先方がまだ答えられないことを繰り返し聞く商談になります。

反対に、利用したい部署と具体的な課題があるのに、社内説明に必要な資料が不足している場合もあります。返事が遅い理由を「大企業だから」とまとめず、どの検討が止まっているかを聞きます。

経済産業省が公開する「初期購買趣意書」は、製品の検証後に継続購入や次の協業へ進むか、進まない場合はその理由を伝える項目を設けています。関心を確認するだけでなく、何を判断して返すかをそろえる、という点が商談の整理にも参考になります。経済産業省「初期購買趣意書」

この資料は初期購買・検証を進めるためのモデルです。初回面談の相手に同じ手続きを求めるのではなく、自社の商談でも「先方は何を検討しているか」「次にどの答えをもらうか」を決めるために使います。

止まった商談は、四つの項目で再確認する

次の表は、企業むすび編集部が作成した商談の確認用モデルです。担当者の反応から原因を断定せず、分かっていることと未確認のことを記入します。

止まった商談の確認ポイント
確認する項目 分かれば進めやすくなること 次に聞く質問
関心 何に興味があり、今回の検討に何を期待しているか 「どの部分が、貴社の今の検討に合いそうでしょうか」
課題 誰の、どの仕事や顧客の問題を解くか 「具体的にお困りの部署や、試したい用途はありますか」
予算 誰が費用を検討し、どの時期に判断するか 「費用の検討を始めるには、どの確認が必要でしょうか」
受入先 利用や検証に参加し、結果を確認する人 「実際に利用・検証される部署とも、一度お話しできますか」

「予算がない」という回答にも、今期の予算がない、予算を申請するための情報がない、予算を持つ部署が決まっていない、といった違いがあります。金額の交渉に入る前に、どの状態なのかを確かめます。

受入先が不明な場合は、個別の試作品を増やしても、誰が試すかが決まらないままになります。自社のサービスが役に立つ用途を一つ提案し、その用途を確かめられる人との面談を相談しましょう。

ニーズがまだないなら、用途を一つ探す

新規事業の探索では、先方に明確なニーズや購入計画がないこともあります。その場合の次の仕事は受注の催促ではなく、両社が検討したい用途を一つ決めることです。

「御社の顧客に使えると思います」では、相手も社内に話を持ち込みにくくなります。「この顧客層の、この場面で使えるかを確かめたい」と示し、顧客の話を聞ける部署につなぐ相談へ変えます。

ただし、探索を無期限の無償作業にしないようにします。次の面談で用途が見つからなかった場合は一旦保留するなど、自社が投入する範囲も決めます。

課題があるなら、社内説明に足りないものを聞く

先方が利用したい場面を把握しているなら、資料不足や社内確認が止まっていないかを聞きます。「資料を追加で送ります」ではなく、誰が何を判断するための資料かを確認してください。

使う部署には操作方法、費用を承認する人には対象範囲と総額、システムを確認する人には接続やデータの扱い、と必要な情報は異なります。必要な資料が分かれば、会社紹介の全体資料を作り直すよりも、該当する一枚を補う方が目的に合います。

再連絡は、進捗確認より選択肢を示す

「その後いかがでしょうか」だけでは、先方が返答するための材料が増えません。前回の話を短く確認し、次に進める選択肢を示します。

以下は、店舗スタッフ向けの研修サービスを提案した後に連絡する架空のメール例です。実際の顧客とのやり取りではなく、用途を確認する面談を提案するためのモデルです。

件名:店舗研修への活用について、次の確認のご相談

先日は、店舗スタッフ向けの研修サービスについてお時間をいただき、ありがとうございました。

前回は、研修担当の皆さまにも用途をご確認いただくお話をしました。まず、現在の研修で補いたい内容と、対象となる店舗を伺えればと考えております。

研修を運営する部署の方との面談をご相談できますでしょうか。社内でご説明いただく資料が先に必要でしたら、確認したい点をお知らせください。

現時点で用途の検討が難しい場合は、再度ご相談する時期や条件を合わせられますと幸いです。

この例で求めている返答は、契約の可否ではありません。「利用部署との面談」「社内説明用の資料」「再相談の時期」のどこから始めるかです。

先方から「検討中です」と返答があったら、会議名や社内事情を細かく聞き出すことを目的にしません。「次の検討で判断したいことと、当社が準備すべきものはありますか」と聞き、協力できる範囲を確かめます。

継続・保留・見送りを、自社の投入量と合わせて決める

大企業の商談は、すべてを同じ優先度で追い続けないようにします。相手の会社の大きさや知名度より、次の判断につながる情報と、自社が使う時間を見ます。

次の判断表も編集部のモデルです。「何日返事がなければ失注」といった一律の期限ではなく、先方の検討時期と自社の余力に合わせて使います。

継続・保留・見送りの判断と行動
状況 自社が取る行動
課題を持つ部署と、次に確かめることが決まっている 必要な資料・面談を優先して準備する
関心はあるが、用途や担当部署が未定 用途の候補を一つ示し、次の面談で確かめる
今は予算や人員を割けないが、再検討の時期が分かる その時期と連絡する内容を記録し、一旦保留する
追加の個別作業を求められるが、利用部署や判断条件が決まらない 作業範囲と費用を相談し、合意前の追加作業を止める
自社の方向性と合わない条件が必要 条件を調整できるか確認し、難しければ見送る

保留する場合は、放置するのではなく「何が変われば再開するか」を記録します。新しい事業責任者が決まる、利用部署が見つかる、次年度の予算検討が始まる、といった条件です。

自社の社長が同席する時間と、開発担当者が個別対応に使う時間も分けて把握します。次の判断が決まっていない案件に両方を使い続けると、他の商談や既存顧客への対応を圧迫しかねません。

大きな将来像が語られても、直近の作業だけが増えるなら注意が必要です。将来の売上を見込んで専用開発を始める前に、その作業で誰が何を判断するのかを確かめましょう。

公正取引委員会と経済産業省の指針でも、技術検証で目指すこと、対価、次の段階へ進む条件を共有する考え方が示されています。「今後の取引につながるかもしれない」という期待だけで、作業の範囲を広げないための参考になります。公正取引委員会・経済産業省「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」