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企業むすび コラム

スタートアップを探す前に、自社の提供可能な資産を整理する

自社の強みを連携に活かす:管理者・利用条件・受入作業まで

ベンチャーとの連携に使う自社の資産は、持っているものの一覧ではなく、提供できる条件まで整理します。顧客、販路、設備、データ、人材ごとに、管理する部署と利用条件、先方に求める準備を確認しましょう。

新規事業担当者が「店舗も顧客基盤もあります」と伝えても、どの場所を、誰が、どの目的で使えるかが未定なら、ベンチャーは提案を具体化しにくくなります。保有していることと、今回の連携に使えることを分けるのが出発点です。

このコラムでは、アセットを「連携に使える顧客接点、場所、仕組み、人員などの資産」として扱います。探索の前に、相手へ提示できる提供資源表を作ります。

目次
  1. 資産の大きさより、相手に何を提供できるかを書く
  2. 顧客・販路・設備・データ・人材を具体的な仕事へ直す
  3. 管理する部署と、提供を決める人を確かめる
  4. 提供資源表には、条件と未確認点を残す
  5. モデル:販売店との接点を、提案できる資源へ整理する
  6. データと人材は、利用目的と担当作業まで示す
  7. 提供後の受入と終了も、資源の条件に含める
  8. 企業むすびの見解:最初の用途に合わせて使える資産を示す

資産の大きさより、相手に何を提供できるかを書く

全国の顧客や設備があっても、連携に使う範囲が決まっていなければ、相手は必要な人員や日程を見通せません。「多くの店舗」より、「どの店舗でどの作業を相談できるか」を整理します。

KDDIのMUGENLABO支援プログラムは、大企業各社の課題と提供可能なアセットを公開しています。設備だけでなく、顧客との接点、施設内の場所、ネットワークなども掲載されており、相手へ具体的に示す内容の参考になります。KDDI「MUGENLABO支援プログラム2026」

公開された資産が、すべての応募企業へ無条件に提供されるという意味ではありません。自社でも、提供したいものと、用途や条件を確認してから決めるものを分けます。

資産の名称を書いたら、次の文を続けてみてください。「その資産を使うと、ベンチャーはどの仕事を進められるか」です。

公式例:顧客への接点と専門ノウハウも提供資源になる

KDDIの公式インタビューで丹青社は、提供できるアセットとして、顧客基盤や空間の活用、空間づくりの専門ノウハウ、新規事業チームとの連携を挙げています。設備の貸出だけを考えるのではなく、何を実現するための接点と仕事を提供できるかを見る参考です。KDDI「スタートアップに会いたい!丹青社」

顧客との接点があることと、その顧客の施設を自社の判断で使えることは別です。自社でも、直接提供できる資源、管理者の確認が必要な資源、紹介や相談の機会だけを設けられる資源を分けます。

顧客・販路・設備・データ・人材を具体的な仕事へ直す

以下は編集部が作成した棚卸し用のモデルです。保有規模を並べるだけでなく、連携先が行いたい仕事へつなげて書きます。

自社資産を相手が行う仕事へ具体化する
資産の種類 提供する仕事の例 社内で確認すること
顧客との接点 利用者へのヒアリング、提案先の紹介 接点を持つ担当者、目的、連絡する範囲
販路・営業 顧客への提案、商品の取り扱い検討 営業や仕入れの担当者、販売条件
設備・場所 店舗、事務所、現場での利用確認 管理者、利用できる場所・時間、受入条件
データ・知見 業務の理解、仮説の検討 提供できる情報、利用目的、必要な確認
人材・運用 現場への導入、顧客対応、専門的な確認 担当者の役割、時間、費用、決められる範囲

同じ資産でも、用途によって提供する仕事は変わります。顧客に会う機会をつくることと、その顧客へ共同で販売することは別の協力です。

自社が直接提供できないものは、関連会社や外部の管理者との調整が必要かを確認します。新規事業担当者だけの判断で、相手に利用できると約束しないようにしましょう。

管理する部署と、提供を決める人を確かめる

探索担当者が資産を知っていても、利用を決める権限を持つとは限りません。管理している部署と、今回の目的で使うことを判断する人を確認します。

社内へは、相手企業が何を行い、自社には何をしてほしいかを伝えます。「ベンチャー支援に協力してください」だけでなく、対象、作業、利用条件を説明する必要があります。

例えば、店舗を使うなら、場所を貸す仕事だけとは限りません。入退店、利用者への案内、既存の仕事との調整、終了後の片付けなど、現場側に発生する作業も確認します。

資産を提供することが、担当部署の仕事にどう関係するかも話します。顧客の理解につながる、将来のサービスを検討できるなど、何を確認したいかを合わせると、協力の範囲を相談しやすくなります。

既存部門へは、負担と持ち帰れる情報を同じ提案にする

既存部門にとって、場所や顧客接点の提供は追加の仕事になり得ます。「自社の強みだから活用させてほしい」とだけ伝えず、必要な協力と、その協力で何を知りたいかを並べます。

住宅設備を扱う大企業が、販売店との接点をベンチャーへ紹介する架空モデルなら、販売店の業務を聞く機会を求める前に、営業担当者が紹介する範囲と、ベンチャーが直接聞く内容を示せます。次は編集部作成の相談例です。

販売店が提案資料をどう用意しているかを確認したいと考えています。今回お願いしたいのは、参加できる販売店の調整と初回面談の同席です。個別の製品販売はまだ依頼しません。聞いた課題と提供条件を整理し、貴部門へ返したうえで次の用途を相談します。

相手部門が参加できないなら、公開情報の説明、担当者への聞き取り、別の場所での確認など、問いを確かめる別の方法を選びます。管理者の同意がない資源を、ベンチャーへ先に約束して調整を後回しにしないことが要点です。

提供資源表には、条件と未確認点を残す

紹介先へ渡す表は、使える資産の宣伝ではなく、検討できる範囲を共有するものです。未確定の条件は未確定と示し、確認する相手を置きます。

提供できる条件まで示す資源表
記録する欄 記載する内容
提供する資源 相手が何の仕事に使えるものか
管理部署・担当者 誰に用途と利用条件を相談するか
利用できる範囲 場所、対象者、時間、情報などの範囲
先方の準備 人員、機材、説明資料、提供するサービスなど
自社の作業 案内、調整、確認、運用など
費用と条件 誰が何を負担し、どの合意が必要か
未確認点 何を、誰が、どの時点までに確かめるか

「相談できる」と「提供が決まっている」を同じ状態にしないようにします。先方が人員を確保したり開発を始めたりする前に、利用可否を判断する条件を共有してください。

また、社外へ出す表には、必要な範囲の情報を載せます。公開できる説明と、具体的な相手・目的を確認したうえで共有する詳細は分けます。

モデル:販売店との接点を、提案できる資源へ整理する

住宅設備を扱う大企業が、販売店との接点をベンチャーとの連携に使う架空のモデルです。ベンチャーは、販売店が顧客へ提案する仕事を支えるサービスを持っています。

大企業が「販売店ネットワークを提供します」とだけ伝えると、ベンチャーは一斉に営業できると期待するかもしれません。しかし、まずできることが、営業担当者を交えて課題を聞く面談である可能性もあります。

このモデルでは、販売店の仕事を理解する面談、サービスの利用確認、販売の協力を分けます。最初の面談を相談する段階なら、対象となる販売店、紹介を担う担当者、聞きたい業務を整理します。

販売店との接点を提供内容へ分けるモデル
資源の説明 確認する条件 ベンチャーへ伝える状態
販売店の仕事を聞く接点 担当者、対象となる販売店、面談の目的 営業担当者へ調整を相談する段階
サービスを試す場 利用する担当者、対象業務、費用 利用部署と条件を協議する段階
販売の協力 顧客対応、提案する商品、対価、役割 最初の面談とは別に検討する内容

この表があれば、自社がまだ決めていない協力を、確定した提供として伝えずに済みます。相手も、自社が行う面談や開発の範囲を選びやすくなります。

データと人材は、利用目的と担当作業まで示す

「データがあります」と伝えるだけでは、相手が行いたい分析やサービスに使えるかが分かりません。どの業務のどの情報を、何の目的で扱うかを先に説明します。

提供できる範囲、加工や環境の準備、情報の扱いに必要な社内確認を整理します。個人情報や第三者の情報、契約に関わる条件がある場合は、社内の専門部署と確認してから共有します。

人材を提供する場合も、職種だけでなく担当する仕事を示します。新規事業担当者が面談に同席することと、現場の運用担当者が日々の対応を担うことは別です。

誰がどの作業を引き受けるか、通常業務との兼ね合いを含めて確認します。相手が求める人員を用意できないなら、その状態を伝え、最初に行う仕事を調整します。

提供後の受入と終了も、資源の条件に含める

場所を使う日程が決まっても、受入作業が決まっていなければ、実際の利用を始められない場合があります。連絡する窓口、現場の案内、問い合わせの対応、問題が起きたときの連絡先を合わせます。

例えば、ベンチャーが自社の店舗へサービスを持ち込むなら、現場の通常業務とどのように両立するかを相談します。担当者が不在でも進められる仕事と、現場担当者の参加が必要な仕事を分けておきます。

利用が終了するときも、設備の撤収、情報の扱い、現場へ残る作業を確認します。一度利用できた資源を、同じ条件で継続利用できると決めつけず、次の利用範囲を改めて相談してください。

企業むすびの見解:最初の用途に合わせて使える資産を示す

私たちは、初回の探索で「全国の拠点を使えます」と示すより、最初の用途について何を相談できるかを具体化する方がよいと考えます。ベンチャーが必要とするのは保有規模そのものではなく、自社だけでは得られない顧客理解や販売・運用の機会だからです。

反対に、規模の大きなデータでも、今回の用途と無関係なら先に提供する必要はありません。利用者の行動を確かめたいなら、少量の情報や現場との対話で答えられるかを考えます。

探索前の表は、提供できるもの、条件が整えば使えるもの、今回は提供しないものを分けて更新します。候補企業から予想外の用途が出たときは、資産の一覧へ追加する前に、その用途に必要な条件と現場の作業を管理部署へ戻して相談しましょう。